錦江湾から吹き付ける冷たい北風も和らぎ、野山のいたる所で、春の息吹を感じる季節となりました。
本日は、ご多忙の中、豊留 指宿市長、今林 教育委員長、指宿 市議会、同窓会の皆様をはじめ、多数のご来賓の方々のご臨席を賜り、ここに第六十四回卒業式を執り行うことができますことを、衷心からお礼申し上げます。
ただ今、卒業証書を授与いたしました百八十四名の皆さん、卒業おめでとうございます。また、保護者の皆様、お子様の成長した姿に感無量のことと拝察いたします。これまでのご協力、ご支援に感謝申し上げます。
これからは、社会の先輩として見守っていきたいと思います。
さて、私は、卒業生の三年間をみてきました。皆さんの精神的成長や学校内や学校外での地域活性化の活動には、目を見張るものがありました。指商でしか体験できない取組は、将来、社会生活で役立つと確信しております。
また、進学希望者百%合格の達成は元よりですが、厳しい就職状況の中、「諦めない心」をもって就職活動に望んだことを頼もしく思っております。
試験に何回も落ちれば、自信を無くし、安易にアルバイトやフリーターの道を選ぶ傾向があります。しかし、本校の皆さんは違った。就職希望者全員が最後まで諦めなかった。中には、六回目の挑戦で内定を勝ち取った人もいます。皆さんが模範を示した諦めない心は、指商の伝統として後輩達が引き継いでくれると思います。
私は二十代後半まで、民間企業に営業職として勤めていました。その時代に、上司や同僚、取引先の方から職業人としての心構えや生き方を沢山教えていただきました。 そこで、私自身の失敗や成功の体験から学んだことを皆さんに三つお話しして、指商ビジネス教育の最終章といたします。
一つ目は、新入社員研修で、上司が語ったビジネスの心構えの話です。
昔、靴を販売する会社が販売促進のため、2人の販売員をアフリカに派遣しました。しばらくして、市場調査を終えた販売員から連絡が本社にありました。A販売員は「アフリカでは、靴を履いている人はいません!まずいです。アフリカでは靴は売れません!ここでは販売できません。撤退します。」と報告してきました。
それから間もなく、B販売員から連絡がありました。「アフリカでは靴を履いている人はいません!。チャンスです。靴を履く習慣ができたら、すべての人に売れます!凄い市場があるはずです。全力でアフリカに進出しましょう!」と報告しました。その会社は、アフリカに販売網を作り、大きな成功を収めました、その後、A販売員は販売員のままでしたが、B販売員は経営を任せられるまで成長しました。物事には捉え方が複数あります。どのように捉えるか、どの角度から物事を見るかが大事です。何事にも前向きな考え方で取り組んでください。また、可能なことを可能にするのが本当の仕事ではない。不可能と思えることを可能にすることが本当の仕事であることも心してください。
二つ目は、失敗から学んだことです。
仕事をしていく過程では、想定していなかった課題やトラブルが発生することが多いです。ある時、私が契約した取引先との間で、一人では判断・解決できない問題が起こりました。私は問題解決のために、営業課長へ報告・相談をしました。ことの経緯について報告をしたのち、「課長、どうしたら良いでしょうか」と質問ました。
しかし、穏やかに私の報告を聞いていた課長ですが、突然怒り出しました。「あなたは、私に解決策を考えなさいというのですか」と。自分の席に戻ってからも、何故、課長が急に怒りだしたのか理解できませんでした。しばらくして気づきました。私は、そのトラブルの解決方法について、自分では全く考えず、ただ上司の判断を仰ごうとしていたことに。
それから、その解決策を自分で考え、「A案、B案、C案があります。どの案で解決を図ったらいいですか。私はA案が最善の方法だと考えました」と課長に相談しました。課長は、「A案とB案の両方でトラブルを解決してください」と穏やかに指示してくれました。上司や同僚に判断を仰ぐ時は、まず自分が真剣に考え、相談することがビジネスの鉄則です。
三つ目は、成功から学んだことです。
営業活動をしているとき、大きなビル建築現場を見つけました。このビルなら自分の会社の製品が販売できるかも知れないと思いました。契約を取るためには、ビルのオーナーに会って話をしなければなりません。私は、現場の作業員に、オーナーが現場に来る時間帯を聞き、名刺とパンフレットをもってその現場で待っていました。
しかし、何日経っても、オーナーには会うことができませんでした。二週間程して、オーナーと会うことができました。待っている時間に世間話をしていた現場監督が、若い駆け出しの営業マンがオーナーに会いたがっていることを伝えてくれたのです。私は、早速、当社の製品を紹介し、「見積りをさせてください」とお願いしました。返事は、ノーでした。当然です。総費用を計算するため、構想・設計の段階で、おおよその発注先は工事前に決まっているのです。自分の経験のなさ、未熟さにがっかりしましたが、会社のことや自分の夢などの雑談をして別れました。
しかし、数ヶ月後に、そのオーナーから、「次の仕事で使用する製品の見積りを提出するように」と突然の連絡をいただきました。一営業マンでしかない私を覚えていてくれ、名刺を保管してくれていたのです。その後は、いつも指名をくれ、私の大切なお得意先になっていただきました。営業という仕事は、製品の品質は当然ですが、人と人との信頼で成り立っているのです。どんな時でも、人間関係を大切にしてください。
最後になりましたが、人間の真価は、壁が立ちはだかった時、その壁とどう向き合うかで決まります。その時には、指商で学んだ「本気になれるか、なれないか。そこが分かれ道」という言葉を思い出してください。
卒業生の皆さんが、社会で活躍することを祈念して式辞といたします。
ありがとうございました。

平成24年3月1日 卒業式 式辞より